自分らしく生きるキャリアの立教

立教大学

2025/01/17

キャリアの立教

OVERVIEW

就職という「点」だけでなく、その後の人生を見通した「線」で学生のキャリアを支援する立教大学。社会が複雑になり、働き方もますます多様化する中で、どのように自分らしい人生を実現していけばよいのでしょうか。今回は、卒業生との座談会やインタビューを通して、立教大学のキャリア支援に迫りつつ、「自分らしく生きる」ことについて考えます。

座談会

左から、チロルチョコ社長 松尾裕二さん、テーブルクロスCEO 城宝薫さん、キャリアセンター部長 首藤若菜教授、西原廉太総長

立教大学での学びや経験は、社会でどのように生きているのか。「自分らしく生きる」とはどういうことか。経営者として活躍する二人の卒業生と、西原総長、キャリアセンター部長を務める首藤教授が語り合いました。

立教大学のキャリア?就職支援が目指すもの

首藤 本日はチロルチョコの松尾さんとテーブルクロスの城宝さんにお越しいただき、「自分らしく生きるキャリアの立教」というテーマのもと、西原総長と共に自由に意見を交わしていきたいと思います。まずは自己紹介をお願いします。
松尾 2009年に経済学部経済学科を卒業した松尾裕二です。チロルチョコ株式会社は2024年で創業121年を迎えますが、私は31歳の時に4代目社長に就任しました。会社員を経験してから家業を継いだということもあり、その視点からもキャリアについてお話しできればと思います。

手ごろな価格と豊富な種類で60年以上にわたり多くの人に親しまれているチロルチョコ。左上が初期から製造している「チロルチョコ〈ミルクヌガー〉」。定番商品、季節限定商品など、年間約6億個を生産している。

城宝 2016年に経済学部会計ファイナンス学科を卒業した城宝薫です。在学中の3年次に株式会社テーブルクロスを立ち上げ、現在は主にインバウンド向けのグルメサービスを提供しています。一度も就職したことはありませんが、起業家なりのキャリア観をお伝えできればと思います。

訪日外国人旅行者に向けたワンストップの食のプラットフォームとして、飲食店や食体験の予約ができるサービス「byFood」。

首藤 最初に立教大学のキャリア?就職支援に対する考え方を説明させていただきます。「キャリアの立教」というフレーズがありますが、本学のキャリア支援は、いわゆる就職支援に限らず、それぞれの学生が歩んでいきたい人生を実現するために、どう支えていくかを重視したものです。取り組みの一つとして、「RIKKYO 卒業生訪問会」を年5回ほど開催しています。1回に約20人の卒業生を招き、およそ300人の学生が参加しますが、学生と卒業生が本音で語り合える場にすることを心がけています。この会は1?2年次生も参加可能です。また、2年次生を対象に、3日間以上の就業体験をしてもらう「Rikkyo My Career Gate」というプログラムも用意しています。このように、早い段階からキャリアに対する視野を広げ、理解を深めてもらうための機会が充実していることが、特徴の一つと言えるでしょう。

西原 私は教育懇談会を通して、各地の保護者の方々とお話しする機会があるのですが、やはり最も関心を寄せられるテーマが就職です。「どこに就職できますか?」「どうすれば良い会社に就職できますか?」という質問をよくされます。本学の就職率は98%(2023年度)と高いのでご安心ください、とお伝えはするのですが、同時に「就職だけでなく、正課教育と、課外活動など正課外の経験を含めた学生生活全体を通して、自分なりの“ものの見方”を身に付けてもらうことが大切です」ということもお話ししています。まさに本学の学びのスタイル「RIKKYO Learning Style」が目指す正課教育と正課外教育の両輪で成長してもらいたいとする理念です。有名企業に就職できたからいいという考え方ではなく、自分らしく生きる道筋を学生時代に見つけてほしいというのが私たちの願いです。

※ 教育懇談会:在学生の保護者を対象に本学の教育方針や近況などを説明する会。首都圏と地区別に開催。

経営に生かされている立教での学び

首藤 卒業生のお二人に、大学時代に力を入れたことや、現在に至るまでの道のりを伺いたいと思います。

城宝 祖父が起業家だった影響で、子どもの頃から将来の夢は「社長さんになること」と言っていました。祖父からは、「起業することがゴールではなく、どんな形で社会の役に立てるかが重要なんだ」とよく言われたのを覚えています。高校1年生の時、アメリカに2週間の短期留学をしたのですが、その際、利益を生み出しながら社会貢献活動を行うCSV(Creating Shared Value)経営の概念を学びました。それに感銘を受け、日本でも実践したいと思い、リベラルアーツ教育に力を入れている立教大学への進学を決めたのです。在学中は統計学のゼミに所属。計算は苦手でしたが、粘り強く取り組んだ結果、損益計算書や財務諸表を自分で書けるようになりました。授業を通して身に付けた知識やスキルは、起業や経営に直結しています。私は日本政策金融公庫から融資を受けた初めての学生起業家だったのですが、そうした結果が出せたのも立教での学びがあったからだと思います。

松尾 在学中はダンスサークルの活動に明け暮れました。3年次には副会長として、200人近い学生をまとめた経験があります。予期せぬ事態の対応など苦労もありましたが、現在、同じくらいの人数の社員をまとめるにあたり、当時の経験が生かされていると感じます。卒業後は、いつか家業を継ぐつもりでしたので、経営に生かせるスキルを身に付けようと考え、コンサルティング会社に就職しました。公認会計士や税理士、社会保険労務士が多い会社で、在職中に簿記2級の資格も取得。2年たった頃、チロルチョコに入社し、6年目に社長に就任しました。

リスクに対する不安をどう乗り越えるか

首藤 起業や会社経営は充実感のある人生を送れる半面、リスクも伴います。そのため躊躇ちゅうちょする学生も少なくありませんが、お二人はそれをどのようにクリアされてきたのでしょうか。

城宝 不安を感じることの多くは知識不足が原因です。例えば、起業に失敗して借金を背負うのが怖いという人は多いですが、無担保?無保証人で融資してくれる制度もあります。私自身、起業して最初に取り組んだのは、何が分からず、何に不安を感じるのかを言語化して解決し、不安を解消していく作業でした。

西原 本学ではスタートアップの実績が増えていますが、やはり漠然とした不安を抱えている学生が多いですね。城宝さんのような先輩にお話をしていただきながら、早いうちから学生を後押しできるような形を作りたいと思います。

松尾 大学の同期生が起業して会社を上場させましたが、彼はリスクを恐れず突き進むようなバイタリティーにあふれていました。私の父も新しいことにどんどん挑戦するタイプで、ハラハラしながら見ていましたが、起業家や経営者は多少の不安があっても簡単に足を止めない印象がありますね。

首藤 多くの学生の中で実際に起業する人はわずかでしょう。しかし、具体的なモデルケースを提示することが、学生にキャリアについてより深く考えてもらうきっかけになると感じています。

城宝 私は両親の希望もあって、起業の傍ら就職活動も行っていました。結局は「5年経営して軌道に乗らなかったら就職する」という条件で両親を説得したのですが……。

首藤 最近の就活用語で「オヤカク(親への確認)」「オヤオリ(親へのオリエンテーション)」というものがありますね。内定を得た学生が、その会社に入ってよいか保護者に確認するケースが増えているようです。ただ、保護者が希望している企業が実は経営難だったり、学生の方が新しく正確な情報を持っていたりすることもありますので、その点は我が子を信じてあげてほしいなと思います。

学生時代に取り組むべきこと

知らない企業や知らない仕事は、将来の選択肢になり得ない。さまざまな経験を通して「知っていること」を増やし、将来の可能性を広げることが大切。キャリアセンターでは、そのような機会を豊富に提供している。

首藤 経営者として歩んできた中で、在学生が大学時代に力を入れるといいと思うことを教えてください。

松尾 高校生までは部活動や大学受験など、目標となるものを定めやすいですが、大学に入ると途端に選択肢が多くなり、目標を見失ってしまうことがあります。ですので、大学生のうちに学業でも課外活動でも、一つの目標に向かって熱中する経験をしておくことをおすすめします。私はダンスサークルの副会長として公演を成功させることが大学時代の大きな目標で、誰にも負けないくらい頑張った自負があります。そのおかげで就職活動の面接に自信を持って臨むことができました。

城宝 「興味があることリスト」を作って、全部実行するくらいの気持ちで大学生活を過ごしてはいかがでしょうか。興味のあることに挑戦して、トライアル&エラーができるのが学生時代の強みだと思います。私自身、「興味があることリスト」を作っており、その中に立教大学での「起業家の講演」があったのです。その時に聞いたお話が、起業しようという気持ちを大きく後押ししてくれました。興味のあることに挑戦していれば、たとえその経験が就職や起業に直結しなくても、キャリアを考えるための素材になってくれると思います。

西原 松尾さん、城宝さんがおっしゃるように熱中できること、興味があることを探すのは大切ですね。私自身、学生時代に取り組んだ地域活動が、現在の道に進むきっかけになりました。何が役立つか、その時に分からなくても、いつか芽が出るタイミングがある。現役の学生にも、さまざまなことに挑戦する4年間を過ごしてほしいと願っています。

「自分らしく生きる」とは

首藤 本学のキャリア支援には「自分らしく生きる」というキーワードがあります。お二人にとって「自分らしく生きる」とはどういうことでしょうか。

城宝 好奇心に素直に生きることだと思います。私は昔から海外への憧れと好奇心がありました。しかし、海外在住経験も長期留学経験もなく、グローバル企業に就職して海外で働くという道も選びませんでした。しかし、好奇心を持ち続けたことで、現在では多彩な国?地域の社員と共にダイバーシティに富んだ環境で、訪日外国人に対するビジネスを展開することができています。

松尾 自分が「心地良い状態」でいることでしょうか。私は自社の社員やお客さまを少しでも笑顔にしたいという思いで仕事をしており、それが私にとって心地良い状態です。ですから、社員に負担をかけて売上を10倍に増やしたとしても、大きなストレスを感じると思うのです。もちろん、がむしゃらに働くことが心地良い人もいますし、プライベートが充実していればよいという人もいるでしょう。社会に出れば、おのずと自分の心地良い場所や生き方が分かってきます。その時に無理をせず、自分が心地良い場所を選べることが「自分らしく生きる」ことではないかと思います。

首藤 「“自分らしく生きる”ことが重要です」と言っておきながら、“自分らしさ”とは何かを把握することは容易ではありません。考えすぎて分からなくなることもあると思います。しかし、その時々で一生懸命に生きていくことが、結果的に「自分らしく生きる」ことにつながっていくのではないでしょうか。学生が懸命になれることにたどり着けるよう、できるだけ多くのきっかけや選択肢を提供していきたいと考えています。

西原 私は大学4年間でたくさんの「ものさし」を見つけてほしいと学生に伝えています。一つの「ものさし」しか持っていないと、現代の多様化?複雑化した世界で生きていけないと感じます。さまざまな「ものさし」を見つけるために必要なのが「対話」です。他者との対話の中で気付かされることは多くあります。そうした過程の中で、自分らしく生きる道を見いだしてほしいと願っています。

城宝 薫さん

株式会社テーブルクロス最高経営責任者CEO。2016年経済学部会計ファイナンス学科卒業。在学中の3年次に株式会社テーブルクロスを創業。CSV経営に基づき、飲食店の予約をすると開発途上国の子どもたちに給食を届けられる社会貢献型グルメアプリを運営。現在は訪日外国人旅行者向けのグルメプラットフォーム「byFood」などのサービスを提供する。

松尾 裕二さん

チロルチョコ株式会社代表取締役社長。2009年、経済学部経済学科卒業後、コンサルティング会社に入社。2011年にチロルチョコ株式会社に入社し、販売?開発?製造の部長を経て、2018年より現職。バランス型経営者として会社を利益体質に改善する一方、イベントやSNSを通じてファンとの交流を深めるなどマーケティングにも積極的に取り組む。

首藤 若菜

経済学部経済政策学科教授。キャリアセンター部長。2011年立教大学に着任。2018年より現職。専門分野は労働経済、女性労働論、労使関係論

西原 廉太

立教大学総長。文学部キリスト教学科教授。専門分野は、アングリカニズム、エキュメニズム、組織神学、現代神学。キリスト教学校教育同盟第28代理事長

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